易経とは2:占いのための占いマメ知識

■易の成立と展開
●占筮の定義
『太玄経』 に基づくものを言う場合もごく稀にあるが、一般に「占筮」といえば 『易経』に基づき、筮竹(始原には「蓍」(キク科多年草であるノコギリソウのこと、ただし、和名の「メドギ」はメドハギという豆科の植物)の茎を乾燥させたもの)を用いて占をなすことを言います。

この占においては、50本の筮竹を操作して卦や爻を選び定め、それによって吉凶その他を占います。卜筮と同義。


●易占の成立
古代中国、殷代には、亀甲を焼き、そこに現れる亀裂の形(卜兆)で、国家的な行事の吉凶を占う「亀卜」が、神事として盛んに行われていたことが、殷墟における多量の甲骨文の発見などにより知られています。

西周以降の文の、「蓍亀」や「亀策」(策は筮竹)などの語に見られるように、その後、亀卜と筮占が併用された時代があったらしいです。

両者の比較については、『春秋左氏伝』僖公4年の記に、亀卜では不吉、占筮では吉と、結果が違ったことについて卜人が、「筮は短にして卜(亀卜)は長なり。

卜に従うに如かず(占筮は短期の視点から示し、亀卜は長期の視点から示します。亀卜に従うほうがよいでしょう)」と述べた、という記事が見られます。

『春秋左氏伝』には亀卜や占筮に関するエピソードが多く存在するが、それらの記事では、(亀卜の)卜兆と、(占筮の)卦、また、卜兆の形につけられた占いの言葉である繇辞(ちゅうじ)と、卦爻につけられた占いの言葉である卦辞・爻辞が、それぞれ対比的な関係を見せています。

また、周代の理想的な官制を描いた『周礼』の春官宗伯には大卜という官吏が三兆・三易・三夢の法を司ったとされ、三兆(玉兆・瓦兆・原兆)すなわち、亀卜に関しては「その経兆の体は皆な百有二十、その頌は皆な千有二百」とあり、後漢の鄭玄は卜兆が120体に分類され、1体ごとに10ずつの繇があったと解しています。

一方、三易(連山・帰蔵・周易)すなわち占筮に関しては「その経卦は皆な八、その別は皆な六十有四」と述べ、卦に八卦があり、それを2つ組み合わせた六十四卦の卦辞がある『易』に対応した記述となっています。

なお三易の「連山」「歸藏」を鄭玄はそれぞれ夏代・殷代の易と解しています。


●経伝
筮竹を操作した結果、得られる記号である卦は6本の「爻」と呼ばれる横棒(─か--の2種類がある)によって構成されていますが、これは3爻ずつのものが上下に重ねて作られているとされます。

この3爻の組み合わせによってできる8つの基本図像は八卦と呼ばれます。

伝説によれば、まず伏羲が八卦を作り、さらにそれを重ねて六十四卦としました(一説に神農が重卦したとも)。

次に周の文王が卦辞を作り、周公が爻辞を作った(一説に爻辞も文王の作とする)。

そして、孔子が「伝」を書いて商瞿(しょうく)へと伝え、漢代の田何(でんか)に至ったものとされます。

この『易』作成に関わる伏羲・文王(周公)・孔子を三聖と言う(文王と周公を分ける場合でも親子なので一人として数える)。

このような伝説は儒家が『易』を聖人の作った経典としてゆく過程で形成されました。

伏羲画卦は「易伝」の繋辞下伝の記述に基づいており、包犠(伏羲)が天地自然の造型を観察して卦を作り、神明の徳に通じ、万物の姿を類型化したとあり、以後、包犠-神農-黄帝-堯-舜と続く聖人たちが卦にもとづき人間社会の文明制度を創造したとあります。

『易経』は従来、占いの書であるが、易伝においては卦の象形が天地自然に由来するとされ、社会事象にまで適用されました。

八卦の象はさまざまな事物・事象を表すが、特に説卦伝において整理して示されており、乾=天、坤=地、震=雷、巽=風、坎=水、離=火、艮=山、兌=沢としたり、人間社会に類推して乾=母、坤=父、震=長男、巽=長女、坎=中男、離=中女、艮=少男、兌=少女としました。

一方、爻については陰陽思想により─を陽、--を陰とし、万物の相反する性質について説明しました。

このように戦国時代以降、儒家は陰陽思想や黄老思想を取り入れつつ天地万物の生成変化を説明する易伝を作成することで『易』の経典としての位置を確立させました。

なお八卦の順序には繋辞上伝の生成論(太極-両儀-四象-八卦)による「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」と説卦伝の生成論による「乾・坤・震・巽・坎・離・艮・兌」の2通りがあります。

前者を伏義先天八卦、後者を文王後天八卦と呼び、前者によって八卦を配置した図を先天図、後者によるものを後天図と言います。

しかし、実際は11世紀の北宋の邵雍の著作『皇極経世書』において初めて伏義先天八卦、文王後天八卦として図と結びつけられたのであり、先天諸図は邵雍の創作と推測されています。

1993年、郭店一号墓より竹簡に記された『易』が発見されました。

これは現存最古の秦代の『易』の写本です。



■占法
『易』の経文には占法に関する記述がなく、繋辞上伝に簡単に記述されているのみです。

繋辞上伝をもとに唐の孔穎達『周易正義』や南宋の朱熹『周易本義』筮儀によって復元の試みがなされ、現在の占いはもっぱら朱熹に依っています。

朱熹の本筮法を筮竹あるいは蓍の使用に限って説明すれば以下のようです。

繋辞上伝には「四営して易を成し、十有八変して卦を成す」とあり、これを四つの営みによって一変ができ、三変で1爻が得られ、それを6回繰り返した18変で1卦が得られるとしました。

さらに4営は伝文にある
「分かちて二と為し以て両に象る」を第1営、
「一を掛け以て三に象る」を第2営、
「これを揲(かぞ)うるに四を以てし以て四時に象る」を第3営、「奇を扐に帰し以て閏に象る(「奇」は残余、「扐」は指の間と解釈される)」を第4営としました。

●第1変
・50本の筮竹の中から1本を取り、筮筒に戻す。この1本は使用せず、49本を用いる。この1本は太極に象る。

・第1営 - 残りの筮竹を無心で左手と右手で2つに分ける。これは天地に象る。

・第2営 - 右手の中から1本を抜き、左手の小指と薬指の間に挟む。この1本は人に象り、あわせて天地人の三才に象る。

・第3営(1) - 左手分(天)の本数を右手で4本ずつ数える。これは四時に象る。

・第4営(1) - その余り(割り切れる場合には4本)を薬指と中指の間に挟む。これは閏月に象る。

・第3営(2) - 右手分(地)の本数を左手で4本ずつ数える。

・第4営(2) - 残った余り(割り切れる場合は4本)を中指と人差し指の間に挟む。第2営からここまでの5操作のうちに閏月を象る残余を挟む操作が2度あることは五歳二閏(5年に約2回閏月があること)に象る。

・左手の指の間に挟みこんだ残余の筮竹の総和を求める。必ず9本か5本になる。


●第2変
49本から第1変の結果の9本か5本を抜いた44本または40本の筮竹で四営を行う。すると左手の指に挟みこまれた筮竹の総和は8本か4本になる。


●第3変
第2変の結果の8本か4本を抜いた40本か、36本か、32本の筮竹で四営を行う。すると左手の指に挟みこまれた筮竹の総和は8本か4本になる。


●画爻
ここで第1変・第2変・第3変の残数により初爻が決まり、それを記録する作業が行われる。

これは筆で板に4種類の記号を書き込むが、卦木(算木)で表すこともできる。

残余の数は9本か5本、8本か4本であり、これを多いか少ないかによって区別すると、3変とも多い「三多」、2変が少なく1変が多い「二少一多」、2変が多く1変が少ない「二多一少」、3変とも少ない「三少」となる。

これらの総和をそれぞれ最初の49本から引くと数えた筮竹の総数に当たるが、これは四時の4と陰陽の数を相乗じることによって得られるとされる。

すなわち老陽の9、少陰の8、少陽の7、老陰の6である。

ここで導かれた陰陽の属性を表す記号(重・折・単・交)を初爻の位置に記録する。

ここで少陽・老陽は陽爻であるが、少陽が不変爻であるのに対し、老陽は陰への変化の可能性をもった変爻である。

また少陰・老陰は陰爻であるが、少陰が不変爻であるのに対し、老陰は陽への変化の可能性をもった変爻である。


●第4変〜第18変
上記と同様の操作を続け、初爻の上に下から上への順に第2爻から上爻までを記録し、6爻1卦が定まる。


●占断
以上の操作で定まった卦を「本卦(ほんか)」といい、さらに本卦の変爻(老陰・老陽)を相対する属性に変化させた卦を求め、これを「之卦(しか)」という。

ここではじめて『易経』による占断がなされる。

占いの結果は本卦と之卦の卦辞を踏まえたうえで、本卦の変爻の爻辞に求められる。

なお2つ以上の変爻がある場合には本卦の卦辞によれ(『春秋左氏伝』)あるいは2変爻であれば本卦のその2爻辞(上位を主とする)により、3爻辞であれば本卦と之卦の各卦辞によれ(朱熹『易学啓蒙』)とされる。

例えば、左手の指に挟んだ残数が第3変までで9・8・4、第6変までで9・4・8、第9変までで5・8・8、第12変までで9・8・8、第15変までで9・4・4、第18変までで5・8・4であったとすると、¦¦×||| と記録され、本卦は¦¦¦|||泰、之卦は¦¦||||大壮となる。

これを「泰の大壮に之(ゆ)く」といい、占断は泰・大壮の卦辞を参考にしつつ泰卦の変爻、六四の爻辞によって行われる。

また筮竹を用いずに卦を立てる占法もあり、3枚の硬貨を同時に投げて、3枚裏を老陽(□)、2枚裏・1枚表を少陰(--)、2枚表・1枚裏を少陽(─)、3枚表を老陰(×)とする擲銭法が唐の賈公彦『儀礼正義』に記されています。





この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。